ガルテア連邦遺跡の装飾に関する考察
概要
ケルオン大陸北部に位置するミリアム遺跡及びオーダリア大陸中部に位置するレイスウォール王墓遺跡はどちらもガルテア連邦草創期に建立されたものであるが, その関連性についてはいまだ不明な点が多く残されている.
本稿では, 両遺跡の装飾を通してそれぞれの特徴を把握するとともに, それらの共通点を探ることで遺跡の性質を明らかにすることを目的とする.
遺跡解説
ミリアム遺跡はケルオン大陸北部, パラミナ大峡谷の南方に位置する神殿遺跡であり, 祭神は非キルティア系の剣神ミリアムである.
OB44年にガルテア連邦初代王レイスウォールが死去したことに伴い当時のキルティア教大僧正が覇王の剣を封じているが, 本来当遺跡はキルティア教との関連はなく, 封印場所の選定理由については不明とされてきた.
神殿自体は谷間に建設されており, 入口付近では氷河由来と考えられる水路が配されている.
レイスウォール王墓遺跡はオーダリア大陸中部, ガルテア半島の付け根付近に位置しており, エンサ大砂海の最西端にも相当する.
OB392年にガルテア本家断絶に伴い暁の断片が封じられたが, 一般に言及されている覇王の財宝は実質的には魔人べリアスであり, こちらは少なくともOB44年から君臨していると考えられる.
ミリアム遺跡同様王墓は谷間に建設されているが, こちらの谷間は人工的に造営されたものと考えられる.
ミリアム遺跡
床材
神殿の内外を問わず1辺がおよそ 50 cm 程の立方体の形をした石材ブロックが用いられており, 自然光下では明るい茶色を呈する.
屋外では中央の通路に緑色がかった石材が配され, その周囲は線条の彫込みが施された金属板が取囲んでいる(写真1).
壁面装飾
遺跡を取囲むパラミナ大峡谷の崖部分にも装飾が施されており, 最下部から上方に向けて①薄い煉瓦層, ②線条の彫込みが施された飾り板, ③卵型に×印の紋様と細長い人型の交互パターン, ④前項の紋様から卵を抜いた紋様と細長い人型の交互パターン, ⑤厚い煉瓦層, ⑥線条の彫込みが施された飾り板, ⑦正方形を基調としたブロックパターン, となっている(写真2).
このうち③の卵型紋様は神殿の内外を問わず各所に配されており, 神殿自体の紋様と考えられる(写真3).
神殿外周では崖部に見られた②飾り板と, 細長い台形状のパターンがみられる(写真4).
またここの扉は飾りブロックで取囲まれているが, このブロックは水路外周でみられたものと同一のパターンである(写真1).
神殿内部の側壁は峡谷崖部同様に複数のパターンを積重ねており, 大半は床面から上方に向けて①煉瓦層, ②崖部⑦にみられる正方形ブロックパターン, ③煉瓦層, ④波線パターンの飾り板, ⑤薄い煉瓦層, ⑥天地を反転させた青海波様の飾り板, ⑦比較的平滑な飾り板, ⑧正方形ブロックパターン, ⑨編込柄の細長いパターン, となっている(写真5).
また屋外でもみられた卵型の紋様も存在し, 特に一部では卵型紋様と人面のような紋様が融合した形で存在する(写真6).
最深部でもやはり卵型の紋様及び正方形ブロックパターンが配されている(写真7).
柱
遺跡内外の随所に円柱が存在するが, これは台座の有無により大きく2種類に分類できる.
台座が存在しない方は下部に反転青海波, 中部に波線パターンを持つ(写真8)が, 台座が存在する方は上下端に正方形ブロックパターンと編込柄パターンを持つ(写真9).
遺跡内部の下部では上位の通路を支える形でアーチ状の細い角柱が存在するが, ここにおける紋様は市松柄の正方形パターン及び水路外周で見られたパターンを有しており, 遺跡入口の円柱と同じ意匠を確認できる(写真3・10).
また遺跡中に3箇所存在する広間の外縁には共通して斜めに突き出した柱状の構造物が確認できた(写真11).
断面は正方形を基調としているが2辺が凹んでおり, 他の紋様との関連性は不明である.
唯一最下部の通路でも同一の紋様がみられたが, これが柱としての役割を果たすか壁面に組込まれるべきなのかも不明である(写真12).
彫像
彫像は大きく4系統に分けられ, 大半は遺跡内外で共通してみられる.
彫像の過半を占めるのが尻尾の生えた人型のもので, その多くは輪っかのようなものを持ち座っているものである(写真13).
遺跡内には3個体のみ立位のものが存在し, これらは着帽で杓を持ち, 烈士と呼称されている.
遺跡内外にみられるものはこの他に獣を象ったもので, 羽根の生えた獅子のような形状をしているものがある(写真14).
一方遺跡内部のみにみられる彫像にも人型及び獣系のものが存在し, そのうち人型のものは顔面のみのブロックとして存在する.
顔面のみのブロックの天面は特有の曼荼羅に似た正方形紋様となっており, 顔面形状および紋様について後述のレイスウォール王墓遺跡に同一のものが確認できた(写真15・16・18・33).
動物像は獅子像とよく似た形状の羽根が生えた牛の形をしている(写真17).
レイスウォール王墓遺跡
床材
遺跡内部では主に1辺がおよそ 50 cm 程の立方体の形をした石材ブロックが, 一部通路においては大型の飾りブロックが用いられており, いずれもミリアム遺跡のものと同一であると考えられる(写真16・18).
また, 中層の南北を中心にみられる燭台や転移装置の基部には共通した紋様がみられ, どちらの設備に対しても位置合わせの機能を有しているものと考えられる(写真19・20).
下部には大規模な広間が存在するが, ここでは一回り小さいタイルを基調とし, 中央部に先述のものとは異なる大規模な紋様が配置されている(写真21).
広間外郭通路についても, 広間にあった紋様の中央にあるものと同じ意匠が用いられている(写真22).
最下部では他に例を見ない床材が用いられている.
中央通路に用いられた煉瓦は三角形を基調とした緑色または白色の彩文が施され, 通路外の広間では先述の彩文を切出して正方形デザインとしたものが施されている(写真23).
壁面装飾
遺跡外観は様々な構成要素からなるが, ①基台のリボン様の浮出し紋, ②階段脇の市松柄の飾りブロック, ③左右両翼の暖簾様の飾り紋, が遺跡内部と共通する要素である(写真24).
また, 遺跡内外を結ぶ転移装置付近の壁材には共通のものが用いられていた(写真25).
遺跡内部の基本的な装飾は床面から上方に向けて先述の外観を思わせる①リボン様の柄, ②市松パターン, ③下向き三角を基調とする煉瓦パターン, となっている(写真26).
各所の壁面には人面を思わせる装飾も確認された(写真27).
最深部と外部とに魔人の封印紋に類似する何らかの紋様が確認できたが, 詳細は不明である(写真28・29・30).
柱
遺跡外部に並ぶ円柱はやはり基部に魔人のものと類似した謎の紋様があるほか, 中部に丸みを帯びた十字の飾り紋がみられる(写真31).
遺跡そのものを支える円柱の基部には市松紋が施されており, 先述の石材とも調和的である(写真24).
遺跡内部は原則として丸柱で構成され葉っぱのような紋様が施されているが, 部屋を支える部分についてのみ共通の基部の上に角柱が備えられている(写真32).
彫像
彫像は1種類のみで, ミリアム遺跡に見られたものと同一の顔面ブロックであった(写真15・33).
考察
ミリアム遺跡・レイスウォール王墓遺跡について装飾品を検討したが, 両遺跡間では床材と顔面ブロックにおいて共通点がみられた.
特に顔面ブロックはどちらの遺跡でも制限通路の床材としても用いられるなど用途が共通しており, 遺跡の設計段階からある程度共通の思想を持って建設されたと考えてよいだろう.
壁面装飾に関してはどちらの遺跡においても人型の紋様を見出した.
レイスウォール王墓遺跡においては魔人べリアスの封印紋と類似したパターンが多いため, ミリアム遺跡に関しても遺跡の守護あるいは祭神に関連するものと考えられる.
封じられている覇王の剣, 人造ドラゴンであるヴィヌスカラ, 及び背徳の皇帝マティウス(の封印紋)のいずれにも類似していないことから, ミリアム遺跡の壁面にある人型は祭神である剣神ミリアムを象ったものである可能性が高い.
また人型と重合わせられ, こちらも遺跡内各所に見られる卵型紋も神授の破魔石の原岩である天陽の繭と形状が類似していることから, 非キルティア系でありレイスウォール王と何らかの関連がある剣神ミリアムはオキューリアであるとするのが妥当であろう.
これまで覇王の剣がミリアム遺跡に封じられた真意については不明とされてきたが, レイスウォール王墓遺跡・ミリアム遺跡はほぼ同年代にレイスウォール王の勅命により建立され, 供物を隔てながらも目的を同一とした宝物殿としての役割が与えられていたと考えることができる.
図版(キャプチャ画像)
PS4版『FINAL FANTASY XII THE ZODIAC AGE』のゲーム画面からPS4のキャプチャ機能により収集.
掲載内容の権利表示は公式サイトの条件による.
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